第一牧志公設市場の周辺に緻密に入り組んだ路地には、迷子になりながら散策する楽しみがあります。どこに繋がっているのかわからない細い道を行きつ戻りつしていると、まるでアジアの生活路に迷い込んだような気分に。
そんな界隈に、本当に“台湾なお店”があります。焼小籠包の専門店「臺瓏(タイロン)」。シェフは台湾生まれの陳 宥任(チェン ヨウレン)さん。高校在学中から料理の経験を積み、母国の料理を継承したいと包子(パオズ:小麦粉で生地を作る饅頭)の専門店で修業をした後、台北市内で焼き小籠包の販売をスタート。25歳でタイロンの料理長として沖縄へやってきました。台湾の技法と思想を受け継ぎつつ、沖縄の食材を使いこなす。互いの国の食文化を小籠包で融合しています。


●沖縄の食材を台湾の技術に詰め込んで
タイロンは1Fに台湾料理店、2Fに工場を持ち、本場台湾の味は飲食店への卸でも人気です。料理のメニューは魯肉飯(ルーローハン)、鶏肉飯、牛肉麺、台湾麻辣(マーラー)麺などオーソドックスな台湾料理が並び、ダントツの人気はやはり小籠包。



皮の下部はカリっと揚げ焼きされて香ばしく、生地はむっちり、中にはたっぷりと肉汁が詰まっています。定番の具である豚肉には金アグーを使い、他にも勝連産もずく、紅いも、照間ビーグ(いぐさ)など、沖縄ならではのユニークな食材の組み合わせも。



「今日はスペシャルにいろいろと盛り合わせてみました」と、陳さんと一緒に商品開発に当たる宮里学さん。緑色はビーグが生地に練り込まれたもので、ひと口かじればい草の香りがふわりと立ち上がります。ほのかに甘く仕上げた紅いもはデザート代わりにいただきたい一品。


●マグロを肉まんの具にできないか?
いま、シェフが向き合っている新メニューにマグロを使った饅頭があります。キハダやメバチ、ビンナガマグロなど生鮮マグロが一年中水揚げされるのが沖縄県。中でもタイロンがある那覇市はマグロを市魚に認定しています。日常的に新鮮でおいしいマグロが手に入るならば、これを台湾の手法で表現できないか、というチャレンジです。



陳さんが作る生地はツヤツヤ、ふかふか。

「マグロでも魚種によって食感はだいぶ変わります。加熱することで油が抜けてパサついたり、味が抜け落ちたりしないよう細かく調整を重ねています」と工場の品質管理を担当する与那覇恵さん。



艶のある生地を割るとふわりとカレーの香りが広がり、刻んだマグロの赤身と、食感にメリハリをつけるための角切りのジャガイモ。そのまま食べればあっさりと、少し醤油をつけるとお酒のアテ度がグッと増します。蒸したマグロは初めての体験。

実は現在、この「マグロカレーまん」はまだメニューに載っていません。マグロでないと出せない味づくり、マグロ感をさらに出せる余地があるのではないか? 最終調整の段階で、年内には登場予定とのこと。


●マグロ1本を生~加熱まで家庭で楽しむ
さて、沖縄でお会いする方々に投げかけている「お気に入りのマグロの食べ方を教えてください」という質問。今回も県外出身者の私には、へ~! と意外なことだらけでした(でも、沖縄の方々にとっては当たり前ですか?)
宮里さんは酢味噌和え。「泡盛、酢、白味噌、お砂糖で酢味噌を作って、マグロと薄くスライスしたキュウリを和えていただくのが好きです」。
与那覇さんはお父様が作るマグロの食べ尽くしコース。「小ぶりのメバチマグロを買ってきて、刺身→酢味噌→ヅケ→フライパンでソテーと日ごとに食べ分けていきます。ソテーは、オリーブオイルにニンニクを入れて玉ねぎを炒め、レモンを絞っていただくとおいしくて」
生~加熱まで長く味わえるのは、生鮮マグロを一本単位で買える沖縄だからこそ。旅先ではどうしても外食になりがちですが、いつかキッチン付きの宿にして、市場で買ったマグロを料理してみたいものです。


【profile】 料理通信社 浅井裕喜 雑誌『料理通信』の販売&広報担当。縁あって、ここ数年は年に2~3回の頻度で沖縄通いを続けている。行くたびに沖縄の食の新しい側面に出合い感動しきり。
Web料理通信:https://r-tsushin.com/
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