近海で獲れるから、沖縄のマグロは冷凍されず生鮮のまま水揚げされる――とは聞くものの、近海ってどのくらいの近さ? 船が日帰りできるくらい?海のスケールを知らないが故の素朴な疑問を抱えて、那覇市沿岸漁業協同組合を訪ねました。那覇のマグロ漁について知るプチレッスンです。また、「なはまぐろ」が目指すこれからのブランドの形についても伺いました。




●漁場は、地平線3つ分ぐらい先にある

「那覇市沿岸漁業協同組合には50~60名の漁師がいて、漁法は延縄(はえなわ)漁、パヤオ漁、集魚灯(しゅうぎょとう)の3タイプあります。ここではパヤオ漁と集魚灯がメインですが、同じ那覇市内でも那覇地区漁協や沖縄県近海鮪漁協になると延縄漁が主流になります」と教えてくれたのは、那覇市沿岸漁業協同組合の参事、仲里 司 さん。

延縄漁は全長100kmにもおよぶ縄に仕掛けを付けて引き上げる漁法。沖縄本島の北から南までが約106kmなので、島をさらえるほど(!)の長さをイメージするとぐっとわかりやすくなります。一回の仕掛けが明暗を分ける漁で、当たれば数を見込める一方、漁具や人件費で高コストという一面も。

パヤオ漁は「パヤオ」という人工漁礁の下に全長2,000〜2,500mのロープを垂らし、周辺に集まってくる回遊魚を一匹ずつ釣り上げるもの。また、闇夜の海に光を灯し、集まってくるマグロを餌で釣り上げるのが集魚灯による漁法です。いずれも一度に獲れる量は多くないものの、漁場を移動しながら漁ができるため確実性が増し、道具も人も費用を抑えられるというメリットがあります。

「どの漁法で勝負するかは、漁師の好みです」と聞けば、ハイリスク・ハイリターン型か、手堅く戦利品を積み上げるタイプか、選択に漁師それぞれの個性が見えるようで何とも興味がかき立てられます。

ところで仲里さん、そもそも近海って、どのくらいの近さですか?

「私たちの場合、パヤオ漁は港から40マイル沖を目指します。時間にして片道4時間。いま見えている地平線、3つ分くらいでしょうか(笑)」。

近海とはいえ1日で帰って来られるわけでなく、出港から3~4日かけて帰港。「この3~4日というのはパヤオ漁について漁協が設けている制約でもあります。釣り上げたマグロを良い状態で持ち帰るためにこの日数内に戻ることをルールにしています」。


那覇市沿岸漁協の目の前にある湾の眺め。釣り好きに向けてのアクティビティとして日帰りのマグロ釣りツアーもある。


●トレーサビリティと品質向上を目指して

実は「なはまぐろ」というブランドは、この名称ではまだ流通していません。いまは土台作りの期間。「那覇で水揚げされたから『なはまぐろ』を名乗るのではなく、良い状態で流通するマグロとしてブランドを磨いていきたい」と仲里さん。

そのために「トレーサビリティの確立」と「品質の向上」の実証実験に取り組んでいます。誰がいつどこで獲ったか、どういう流通を経て消費されたか、トレース(追跡)できる仕組みを作るべくIoTを用いた研究が進行中。また、水中の酸素を窒素で取り除くことで無菌状態を作り、運搬時のマグロの酸化を防ぐ「低酸素水」の可能性も模索しています。

「良いマグロかどうかを決めるのは漁師や漁協ではなく、それを食べる消費者に委ねられるべきだと考えています」とも。生鮮でおいしいと言われる沖縄のマグロだからこそ、“生鮮だから”の先を目指したい。そこに、マグロを市魚とする那覇市の矜持があります。


那覇市港町泊漁港敷地内の市場「泊いゆまち」では、ガラス張りの調理室でマグロの解体を見ることもできる。



市場内では生鮮マグロがごろりと並ぶ。目玉やしっぽ、皮など、生鮮ならではの部位売りも。おすすめの調理例も参考にどうぞ!


●漁師直伝! 飽きないマグロレシピ

さて最後に、私のフィールドワークでもあるマグロアンケート。「おすすめの食べ方を教えてください」に答えてもらいました。仲里さんのお気に入りは、「マヨネーズ、ニンニク、醤油に、少しだけワサビを効かせたタレを作って、マグロの刺身に少しだけつけて食べると、うまい」。これでもかとマグロを食べる漁師でも飽きずに食べ続けられる! と太鼓判です。全3回のこのコラム、残り2回は料理編でお届けします。
(profile) 料理通信社 浅井裕喜 雑誌『料理通信』の販売&広報担当。縁あって、ここ数年は年に2~3回の頻度で沖縄通いを続けている。行くたびに沖縄の食の新しい側面に出合い感動しきり。
Web料理通信:https://r-tsushin.com/
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